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「走り込み終わりー!一旦休憩挟んで飯行くぞー!」
『王都警備隊統括本部』。
その演習グラウンドにて、エドが疲弊した騎士達に叫んでいた。
時刻は正午過ぎ。
20㎏はあるリュックを抱え三時間もアスレチックコースを走らされ、そのゴールにて倒れている者がほとんどの第三騎士隊。
その中に涼しい顔のスタンと、震える足でも絶対に倒れまいとするプラムの姿がある。
「おいスタン?どうしたお前?もう疲れたのか?」
問い掛けにスタンはタオルで汗を拭いながらプラムを見る。
「そうだな。良い運動になった」
「ほう?俺はまだまだ走れるぜ?ぜんっぜん疲れてねぇからな」
プラムは呼吸も荒く、足も手も震えている。
「そうか。ならばあと十周ほどして飯に行くか?付き合うぞ」
当たり前に言うので、プラムは「へ?」と顔をひきつらせる。
「お、おう!ちょうど足りねぇと思ってたんだよなぁ!」
目を白黒させながら言うので、後ろからエドが後頭部を叩いた。
「オーバーワークだ馬鹿。くそみてぇな見栄張るんじゃねぇ」
エドに叱られ、「いや兄貴、俺はまだ」と言いかけてまた叩かれる。
「隊長だ。仕事じゃそう呼べっつってるだろ?まだ慣れねぇのか?」
言われてプラムは「すんません」と俯いた。
エドは「それに」とスタンを見る。
「こいつの荷物はてめぇらと違って、重力負荷の術式をかけてる。重さだと、、、どれくらいだ?」
「朝の運動だからな。50キロに調整してある」
「はぁ?」とプラム。
自分のリュックを下ろし、「貸せ!」とスタンのリュックを剥ぎ取った。
瞬間にドンと落とす。
「はぁ!?これ50じゃねぇだろ!?」
「なに?調整ミスか?」
スタンはヒョイとそれを持ち上げ、何度か上げ下げする。
「そういう事か」
一人で得心するので、「あ?」とプラムが睨む。
「リュックが50で、そこに重力負荷をかけてあるから勘違いした。重さは、、、分からん」
「お前脳筋にも程があるだろ」
「馬鹿と天才は紙一重って言うからなぁ」とエド。
周りで倒れている騎士達はそれを聞いてカラカラと笑った。
エドは呆れた顔で周囲を見渡し、「取り敢えず、シャワー浴びて飯に」と言いかけてスタンの視線に気付き振り返った。
遥か遠く。
演習グラウンドの入り口付近に人影がある。
その者はこちらを見ているが、体の半分をグラウンドに設置された用具室の壁に隠している。
「あ?あれ、ナナリーか?」
エドが言えば、「ナナリー。そんな名前だったか」とスタン。
「恐らく用があるのは俺だ」
言うとスタンはナナリーへ向かって歩き出す。
「俺は後で行く。先に食堂で食っておいてくれ」
去り際に背中でそう言った。
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