1章 妹と兄と自主制作

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 実はたかのっぽくん、大学を休学をしていたその時期に、なんと家族とも連絡を取る事すら経っていたという、とんでも経歴の持ち主でもあるのだ。  本人曰く、ベースを理由に休学した事がバレるのが怖くて連絡を取れなくなってしまっていたとの事だったが、家族からしたらたまったものではない。  そこで兄を探すため、白羽の矢が立ったのが、兄とそう遠くないところにある大学に通っていた妹さんだった……、というわけである。 (いやぁ、今思い返しても、あの時は本当にびっくりしぜ。なんせ、目の前にとんでもない美少女が現れたかと思ったら、たかのっぽくんの事を『お兄ぃ』とかって言い出すんだもんな)  そういえば、あの後すぐにたかのっぽくんが妹ちゃんを引きずって帰ってしまったから、彼女とは挨拶らしい挨拶も交わさない別れちゃったんだっけ。  一言も話はできなかったけど、落ち着いた雰囲気のあるたかのっぽくんとは真逆に、剣呑とした、どこかピリッとした空気がある少女だった事だけはよく覚えている。  覚えている……、のだが、 「でも、なんで俺達のMV制作が妹ちゃんのポートフォリオ制作に役立つの?」 「え」 「だって、『ポートフォリオ』って、あれだよね。子どもの工作とか作文とか、そういう作品物をまとめるやつ」  ぽんっ、と頭の中に浮かべるものを、美少女の姿から仕事で使っている道具に切り替える。
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