1章 妹と兄と自主制作

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『ポートフォリオ』。  元は確か、『紙束入れ』とか『書類入れ』とか、そんな意味の英単語だったはずだ。  実際に授業で使う代物ではないけれど、子ども達の学習成果物――さっき言った、工作や作文にくわえて、日々のテストや宿題なんかもそれにあたる――をまとめて保存しておく事で、そこから子ども達の学習の状態を分析したり、己の指導の仕方を改めたりできる代物となっている。  学校によっては教育そのものの一環として、子ども達自身に作らせている場所もあるぐらいだ。自分で自分の提出物をまとめる事で、自己評価の仕方を学んでもらうのが目的となっている。  要は、自分で自分の行動を反省したり、もっとこうしてみようと考えたりできる力をつけようって話。  進んで学習したいという気持ちがわくサポートをするアイテムとでも思ってもらえば間違いないかな。  結局のところ、何事も身になるかどうかは本人のやる気次第だからさ。子ども達のやる気を引き出すのもまた、教師の腕の見せどころってな。  でも、それがたかのっぽくんの妹ちゃんの就活と、どう関係するのかがさっぱりだ。 (もしかして、俺と同じで教職に就こうとしてる子だったりするのかな。いやでも、そうならMVが実績になるってのがよくわかんねぇな)  てか、それ以前に就活では使ってないしな、ポートフォリオ。  う~ん? どういうことだ????  たかのっぽくんが「えぇっと……」と困り顔で俺を見てきた。なんて言葉を返せばいいのかわからない、と言いたげな表情だ。  なんか俺、変な事言った? 首をかしげたその時、俺の右隣を陣取っていた優作が「ほー」と面白そうに声をあげた。
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