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――3月第4火曜日、夜22時近く。
IN 音楽スタジオ『Music Studio Re:crieation』、その練習用に貸し出されているスタジオルームの一室にて。
「ダァーハッハッハッハッ!」と、最初に笑い声をあげたのは優作だった。
「おまっ、結婚……、結婚しないのって……、そりゃまた、随分と傑作な質問じゃねぇのっ!」
ドラムスローン――ドラマーが演奏時に座る丸椅子のこと――に座りながら、バシバシと膝を叩き笑う優作。
強面の2文字を地で行く厳つい顔を盛大に崩し、大きく口を開け放ちながら、「ははっ、おまっ、なさけな……、ぶはっ」と遠慮のない笑い声を広くも狭くもない8畳間のスタジオ内に響かせている。
「わ、笑っちゃダメだよ、優くん……っ、んふっ」
続いて口を開いたのは、拓弥だった。
「ダメだよ」とは言いつつも、こちらもこちらで完全に笑いが堪えきれてない。
頑張って笑わらないように口元を手で抑えてくれてはいるが、体は正直だ。ギターを持つ手やストラップのかけられた奴の細い肩が、小刻みに震えている。軽くつつけば、こいつも隣のゴリラ同様、大声で笑い出す事は明白である。
「いやだってよ、」と優作が、目尻にたまった涙を指ですくいながら拓弥に返した。
「スタジオの隅で体育座りして、『俺は結婚すらまともにできない、子どもに夢を見せてあげられない教師失格……』とか言ってるから、何事かと思えばよぉ。まさか小学校のガキ共から『どうして結婚しないの』って訊ねられて、それで落ち込んでるとは誰も思わねぇだろ!」
「まぁ、結婚してるのしていないのじゃなくて、『どうしてしないの』って訊かれちゃうところが、面白い点ではあるよね……、ふっ」
「~~~~~っ、だぁ~~~~っっっっ‼ 笑うなクソフレンド共―――――っ‼‼」
もーっ、我慢ならねぇっ! 幼馴染達の笑い声にこらえられなくなり、俺は大声をあげながら2人を睨み返した。
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