1章 妹と兄と自主制作

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 あ~、言われてみれば、前に会話しているところを見た感じ、そんなに妹ちゃんと仲良さそうな雰囲気じゃなかったもんなぁ。  年子だって話だし、年が近い分、喧嘩になりやすいのかもしれない。  年子って、年が近い分仲良くなりやすそうに見えるが、意外と喧嘩が多いのが実情なんだよね。そういう兄妹、うちの学校にも居ますわ。  しょんぼりと項垂れているたかのっぽくんに苦笑しつつ、「大丈夫、大丈夫」と励ましの声をかける。  その傍らで、映像学科かぁ、と説明された内容について考えてみる。 (これまた未知の世界の単語って感じだけど、そういう学科の生徒さんなら、MV制作が実績作りになるのも頷けるや)  こうして見るとたかのっぽ家って、兄妹揃って何かを作る道に進もうとしてるんだな。親御さんの事も含めて考えると、根っからのクリエイター・アーティスト気質な家なのかもしれない。  たかのっぽくんの話に納得したのか、俺の左で、拓弥がなるほどと言った様子で頷いた。優作も俺の右側で、「まぁ、大体の事情はわかったわ」と腕を組みながら小さく頷いている。  が、拓弥とは違い、なぜかその表情には怪訝の2文字が滲み出ていた。 「どうかしたの、優くん」  優作の表情に気づいたらしい拓弥が、不思議そうに首をかしげながら優作に尋ねた。 「いや、どうっつーか、なんつーか……」と、優作が眉間にしわを寄せたまま答える。 「なんでHerec(うち)なんだって、思ってよ」 「なんでうちなんだ?」  って、なにそれ? どういうこと?  優作の言葉の意味がわからず、今度は俺の首が横に倒れた。
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