プロローグ 結婚

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 こっちは心の底から本気で落ち込んでいるというのに、一体全体、なんでこうも容赦なく笑われなければいけないのか。  つーか、一度結婚経験済の拓弥は置いておくとして、そこのインドアゴリラ! お前は、人の事言えない立場だからな⁉ 呑気に膝なんて叩きながら笑いやがってっ。ドラミングするのは演奏してる時だけにしてくださいませんかねぇ⁉ 「へーん。いいもん。そんなん言うなら、俺もう、今日歌いませーん。へそ曲げました、歌いませーん」  ふんっ! と鼻を鳴らして、と笑い転げる旧友達に背を向けて、スタジオの隅に体育座りをし直す。  そのまま頬を膨らませて子どものごとくヘソを曲げれば、「ごめん、ごめん」と慌てたように拓弥が謝ってきた。が、やっぱりどこか声音に笑いが含まれている。 「いや、別にお前が歌わなくても合わせる事ぐらいは普通にできるから問題ねぇわ」と、その後方でケロリと言ってのけた優作。お前は許さない。一生根に持ってやる。 (くそぅ、なんだよ、ちょっとぐらい慰めてくれてもいいじゃんかよっ)  まぁ、この幼馴染共にそれを期待するのも無駄かぁ、と心の中でため息をこぼす。
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