プロローグ 結婚

7/16
前へ
/200ページ
次へ
 事業毎に運営の仕方は違うのだろうが、うちの小学校の場合は、校内の一室を使う形で事業が展開されている。そのため、こうした春休みなどの長期間中においても、学童に通う子は普段とほぼ変わりなく学校に来るのだ。校庭を遊び場として解放もいるので、時としては学童の子らで校庭が賑わう事もある。  件の質問をしてきた少女達は、そんな学童に通う新1年生達だった。  まだ入学前なので正式な1年生ではないのだが、学童では保護者からの申請さえあれば、入学式前から子どもを預かる事が可能らしい。  とはいえ、まったく名も知らない少女達に話しかけられた時は、さすがにちょっと驚いたけどね。  まぁ、普段よく見知ってるはずの校庭(場所)で、それも兎小屋なんてちょっと特殊な感じの小屋の中に知らない大人がいたら、小さい子どもとしては気になるものなのかもな。「なにしてるのー」って最初は尋ねられたし。  ……にしても、まさか「兎小屋の掃除だよ~」と返したそこから、「どうして結婚しないの」って話にまで会話が発展するとは、夢にも思いませんでしたがね。  どうして子どもってのは、見知った大人の結婚・恋愛事情を知りたがるのかなぁ。永遠の謎だわ。  別に泣いてなんかないんだからねっ、ぐすんっ!  なお、この件については、この直後に学童の女性職員である井上(いのうえ)さんが子ども達を回収していったので、結局俺から子どもへの返答はできずじまいで話は終了している。  井上さんにはあとで平謝りされたが、別に仕事の邪魔をされたわけでもないので、「大丈夫ですよ」とフォローしておいた。「そうですか?」と不安そうに返されたけど、それ以上は謝られなかったので、たぶん納得はしてくれたのだろう。
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加