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「友香……、俺、取り返しのつかない事やっちまった」
俺が神妙な面持ちで言うと、友香は怪訝そうにこちらを見た。
「何やったっての?」
声色に明らかな疑念を感じつつ、俺は芝居を続行する。
「俺がアニメオタクなのは知ってるだろ?特に美少女物が」
「あんたの部屋、女の子のポスターとフィギュアで一杯だもんね。で、それがどうしたのよ」
「女の子……、誘拐しちゃったんだ」
「……ハァ!?」
もちろん嘘だ。
友香と俺は幼稚園からの幼馴染で、今も同じ高校に通っていた。家も近所で頻繁に互いの家を行き来していた。
去年のエイプリルフールのこと。帰宅した俺が自室に入ると、命よりも大事な美少女フィギュアを始めとしたグッズが綺麗に消えていた。母親に全て捨てたと告げられ、発狂した俺は危うく母親を手に掛けるところだった。結局、友香と母親が結託して俺に冗談を仕掛けただけだった。グッズ類は無傷で戻って来たが、あの時の恨みを忘れはしない。今年は俺が騙す番だ。
「妄想と現実の区別がつかなくなって、つい……。ほら、昔秘密基地にしてた川沿いの使われてないボロ小屋があったろ。あそこに監禁してて……ああ、俺どうしたらいいんだ」
正直、こんな低俗な嘘に騙されてくれるほど友香は馬鹿じゃない。一瞬でも驚いてくれればそれで満足だった。しかし――。
「それって……今ニュースでやってる事件のこと?小学生の女の子が行方不明になってるっていう」
友香は表情を曇らせ言った。声も強張っている。
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