嘘を現実に

2/8
前へ
/8ページ
次へ
「……は?」  そんなニュース聞いてない。いや、俺は普段からテレビを見ないから知らなかっただけか。 「あんたがキモオタなのは知ってたけど、まさかホントに……」  友香が携帯に手を伸ばした。予想外の展開に俺の鼓動が跳ね上がる。冷や汗が止まらない。咄嗟に携帯を持つ手を掴んだ。 「ま、待ってくれ。嘘だよ。エイプリルフールの冗談だ」  友香の広角がニヤリと吊り上がった。瞬間、俺は悟った。 「騙されてやんの」  騙したつもりが騙されたのだ。 「そんな事件起こってないっつーの。てか、あんたにそんな大それたこと出来るわけないじゃん」  くそ、今年もしてやられた……!悪戯っぽく笑う友香を見て、俺は肩を落とした。だが同時に安心した。危うく無実の罪で通報されるところだった。 「私を騙そうなんて百年早いのよ。それより手、離してよね」  言われて友香の手を掴んでることを思い出した。 「あ、悪い」  我ながら情けない程の気の動転っぷりだ。俺が手を離した時だった。友香の携帯から着信音が鳴り響いた。  友香は画面を見てお母さんからだ、と言って電話に出た。うん、うん、と相槌を打ちつつ、段々と表情が暗くなっていく。 「何かあったのか?」  俺が尋ねた瞬間、友香の平手が俺の左頬に飛んできた。パチンッと、渇いた音がなる。左頬がジンジンと熱を帯びている。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加