嘘を現実に

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 やがて水の流れる音が聞こえてきた。急斜面の土手を降りて川沿いを少し歩くと、橋の下に例のボロ小屋が見えてきた。もう何年も訪れていなかったが、あの頃のままのオンボロ具合だ。  友香が居ても立ってもいられないという風に駆け出した。ドアノブに手を掛け、こちらを向いて叫ぶ。 「鍵が掛かってる。早く開けなさいよ!」  鍵?鍵なんか掛かってたか?疑問に思いつつ、扉に近付いてノブの辺りを懐中電灯で照らす。重厚感のある南京錠が鈍く光った。扉に比べて真新しく、明らかに最近取り付けられた物のように見えた。 「早くっ、早くしてっ」  友香は中に紗代が居ることを確信しているようだった。胸のざわついた。まさか本当に……。  鍵などもちろん持っていない。だが扉は朽ち掛けた一枚板だ。俺は扉目掛けて思い切り蹴りを入れた。一発、二発。三発目で蝶番ごと扉が弾き飛んだ。大きな音と共に長年溜まった埃が舞い上がる。俺を押し退けて友香が埃の靄の中に飛び込んだ。 「紗代!大丈夫?紗代っ、紗代!」  聞こえてくる友香の声で、紗代がそこに居るのだと悟った。  紗代は木製の椅子に座らされていた。両腕を背もたれの後ろで縛られ、両足を椅子の足に縛られ、目隠しに猿轡を噛まされていた。足元にピンクのランドセルが無造作に転がっている。  俺と友香は急いで紗代の拘束を解いた。細い手首にロープの痕が痛々しく残っている。いつからこの状態だったのか、紗代は酷く衰弱して見えた。
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