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「お姉ちゃんっ」
紗代が友香の胸に飛び込んだ。相当怖かったんだろう。大きな声を上げて泣き出した。友香はそんな紗代の体を強く抱き締めた。
姉妹の感動の再会シーンを、俺は戦々恐々で見つめた。
俺達はその場を離れ、河原の土手に移動した。忌々しい場所から紗代を引き離そうという友香の配慮だった。しばらくは紗代は友香の胸の中で泣いていた。その間、俺は少し離れて立ち呆けていた。友香からの「逃げるな」という、視線が俺を縛っていた。
紗代が落ち着きを取り戻し始めた。まだ啜り泣いてはいるものの、会話は出来そうだった。
「紗代ちゃ――」
「紗代」
俺が口を開くのを友香が遮った。お前は喋るな。黙っていろ。そう言われた気がした。
「紗代、言いたくない事や解らない事は答えなくていい。何があったのかお姉ちゃんに聞かせて?」
紗代が語り始めた内容は俺をさらに凍りつかせた。
下校途中に後ろから袋を被せられ、口を封じられた事。例のボロ小屋に連れて来られ、拘束された事。視界を奪われた状態で身体中を弄られた事。顔は見ていないが、声が良く知る人物に似ていた事。
紗代は震えながらこちらを指差した。
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