第23話 結花同居する

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第23話 結花同居する

翌日、俺と結花は、藤森と名乗る弁護士と事務所の近くで落ち合った。 麗子はと言っていたが、会ってみると麗子の会社の顧問弁護士だった。が、麗子が何を言ったのか知らないが、なぜか俺に対してやたらと腰が低い。 結花の事務所の名前も悪評も知っているようだったので話は早かった。 しかも、藤森弁護士は超優秀だった。 事務所に入ってから毅然とした態度を貫き、全てを解決して出てくるまで一時間もかからなかった。俺も結花も、何回か頷くだけで仕事が終わったのだ。 別れ際、「橘社長には大変お世話になっています。何卒よろしくお伝えください」と言う藤森弁護士は、また腰の低いおじさんに戻っていた。 「直江さん、本当にありがとうございました」 藤森弁護士が去っていくのを見送ると、結花が嬉しそうに言いながら、なんと俺の手を握ってきた。瞳もウルウルしている。いやいや、君を悪の手から救ったのは超弁護士の藤森さんなんだと言いたかったが、結花の中ではなぜか俺が正義のヒーローになっているようだ。 電話で麗子に様子を報告すると、また今晩も一緒にどうかと誘ってきた。 「はい、麗子さんにもお礼を言いたいのでお願いします」 結花の笑顔も素敵だな。やっぱり美人さんには笑っていてもらいたいものだ。 職とも言えない職を失った結花には、麗子の知人がアパレル関係のネットショップを立ち上げているというので、そこのファッションモデルとして紹介してもらった。今はそれほどメジャーなショップではないが、結花には明るい世界で活躍して欲しい。 そんなふうに傍観していた俺だったが、まだ対人は苦手だという結花に頼まれ、結花のマネージャーという職に就いた。もちろん無給だが、プー太郎のおやじより少しはマシになった気分だ。 結花は、今まで住んでいた所は事務所にバレているし、一人暮らしが怖くなったということで俺たちと同居することになった。 「男性不信だなんて本当に可哀そう。荒療治かもしれないけれど、直さんと一晩一緒に過ごしてみれば治っちゃうかもね。そのうち気が向いたら誘ってみれば」 「はい...ぜひよろしくお願いします」 冗談めかして言う麗子の言葉に、結花が頬を赤らめて頷いた。
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