2人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
第22話 結花安心する
「ただいま」
「おかえり~ あまり上手くないけどできたよっ」
舞美が元気よく迎え入れてくれる。
「みなさん、ご家族なんですか?」
「俺たちは夫婦でもなく、この子は子供でもない。言ってみればファミリーってとこかな」
結花が聞いてくるが、自分たちの関係をうまく説明できない。ただ、俺と麗子だけでなく、明るい舞美の存在が結花の緊張をほぐしてくれたようだ。この場の和やかな雰囲気が結花を少しだけ笑顔にした。
「舞美ちゃんが初めてケーキを作ってくれたの。いただきましょ」
麗子がみんなのカップにコーヒーを注ぐ。
「舞美、美味いぞ!」
「へへへ、ありがと」
レシピ通りに作ったのだから、味は保証できる。見た目はアレだけれど...
ケーキを食べてほっこりしたところで、麗子が本題に入る。
「結花ちゃん、その契約書って中身を見ないとなんとも言えないけれど、私の知り合いの弁護士に頼んであげるわ」
「それじゃ、俺が明日にでも一緒に行ってみようか」
俺の言葉に結花の顔が少し曇った。善意で言ったつもりだったが、その顔を見て『しまった』と思った。この娘は男性に良い印象を持っていない。さすがに今日会ったばかりの俺と二人じゃ気持ち悪いよな。
そんな俺たちの表情を読み取ってか、すかさず麗子がフォローを入れる。
「女の敵になるような男たちとは徹底的に戦うわよ。その代わり、この直さんみたいに、女に優しく味方になってくれる男には身も心も捧げちゃうんだから。ね~舞美ちゃん」
「そうだよっ! 直ちゃんだったら絶対大丈夫。結花ちゃん、心配無用だよ」
「それでは、よろしくお願いします」
二人の言葉を聞いて安心した様子の結花は、結局そのまま泊まることになった。
最初のコメントを投稿しよう!