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第7話 ケージとの再会
~ 死神ケージと会ってから8か月後 ~
「本当に直ちゃんって律儀だよね、毎月奥様のお墓参りをするなんて」
「そうか?」
「そうよ。一周忌も終えたって言うのに。いったいいつまで続けるの?」
「俺が死ぬまでだな」
「本当に奥様のことを愛していたのね。なのに、のろけ話なんか一切しないし。逆に妬けちゃうわ」
妻との話なんてできないさ。だって、俺の頭の中からは、妻との思い出が全て消えてしまったのだから。そんなことを思いながら、いつものように妻の墓前へ花を手向けた。
目を開け、ふとむこうを見ると、新しい墓石の前に見覚えのある男が半眼で佇んでていた。身動きもしないでしばらくそうしていたが、すっと力を抜いて歩き始めたところで声をかける。
「ケージ、ケージ!」
「あっ、直江様。お久しぶりです」
「今日もオフでアフターフォローか?」
「ははは。そうなんですよ。お寺は自分探しみたいな場所なので」
ケージはさっきの真剣な顔を誤魔化すかのように、照れ臭そうに答えた。
「直江様はずいぶんと雰囲気が変わりましたね。肌の色艶も良さそうで、服装も垢抜けた感じじゃないですか」
「ちょっと髭を生やして、髪に少しメッシュを入れたりして、ちょい悪おやじ風さ。まぁ、着るものは彼女たちにまかせているんだけどね」
「モテていますか?」
ケージは俺に体を寄せ、耳元で囁いてきた。
「ほどほどにな。お前、本物だったんだな」
「え? どういうことですか? わたくしの偽物がどこかにいました?」
「いや、いいんだ...」
「直ちゃん、お友だち?」
俺たちの会話に結花が入ってきた。
「いや、友だちと言うか、知り合いだ」
「初めまして。大内 結花 です」
「直江様からはケージと呼んでいただいています。よろしくお願いします」
「結花は俺の彼女の一人で、まだ売れていないがモデルをしているんだ。俺はそのマネージャー的な感じだな」
「大内様はモデルさんなんですね、道理で綺麗な方だと思いました」
「ケージさんは何をされているの?」
話しの流れでそうなるよな。ケージが少し困ったような顔で俺のほうを見てきた。
「ケージは死神なんだ」
「うっそ~ 死神って人を殺すヤツでしょ。冗談でしょ、怖いこと言わないで」
「結花、冗談じゃない。ケージは本物の死神だ。それと、死神が人間を殺すんじゃなくて、人間が死ぬから死神が現れるんだ。ケージ、そうだよな」
「はい、直江様のおっしゃる通りです」
「あっ、もひとつ言っておくと、今日はケージはオフなんだって。だから誰も死なないから怖がることはないぞ」
いきなりこんな話をされれば誰も信じるわけがない。
俺だからわかる。しかし結花は違った。
「ははは、直ちゃんっていろんなお友達がいるんだね。さすが直ちゃん」
少しは疑ってもいいのに、結花はとても素直だ。
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