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「バイオレット嬢気分はどうだ?」
もう、こんな時に誰なの?
私は上掛を顔にまでかけてカーテン側には背を向けていたが気分が悪くてそれどころではないので吐き気がしそうなのをこらえて言った。
「すごく悪いわ。でも、いいからもう心配しないで下さい。ここで横になっていれば少しは収まると思いますから」
おかしなものを飲んだせいで誰が声を掛けているかなんて気にしている暇もなかった。
ただ男性らしいと思う人に失礼のないように返事を返すので精一杯だった。
「水は飲んだか?」
「はい」
「では背中でもさすってやろうか?」
「えっ?」
いくら何でも誰かもわからない人にそんなことをしてもらうわけにはいかないだろう。
それに声からして男性と思ったので驚いた。
ずいぶんおかしなことを言うと思っているうちにその人の手が制服の上からそっとあてがわれた。
私はビクリとなったが、すぐに大きな手のひらが優しく上下してせり上がりそうな胃の内容物がすっと大人しくなった。
その手は温かく力強くまるで父にでもさすられているかのようでやめてと言えなくなった。
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