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彼が何もなかったように手を差しだした。
婚約者?何の事?そう言えば兄から婚約の申し込みがあったと手紙が届いていたが…ヴィルフリート・バルガン…脳内検索再生。
「あっ、そうでしたね。あなたが…」
まあ、見れば見惚れるようないいお顔立ちで金色の髪が光に反射していますわ。瞳も琥珀色で煌めいて何だかキッラキッラの人ですね。
こんな男は苦手だ。私はそんな彼の顔を平然と見つめながら流れる額の汗を腕で拭う。
はっ、私は突然淑女に立ち返る。
「まだ決まったわけではありませんから、お構いなく先生」
私はあの時この人と婚約なんて絶対無理って思った。
差しだされた手を握ることもなく慌てて手を後ろにしてその場を立ち去る。
「いや、誤解なんだ。まあ、はっきり婚約が整えば…なぁバイオレット」
彼は後を追いかけて来たが私は無視して走り去った。
彼の声は最後はほとんど聞こえなかったけれど、まあ一応失礼だったと言いたかったらしいとその時私は認識したけれど。
それからはほとんど話をする事もなく2か月が過ぎていた。
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