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ふう、と息を吐き、恭生は夜空を見上げる。
朝陽は誰とも付き合ったことがない。きっともうすでに、朝陽にとっての“初めて”をたくさんもらってしまったに違いない。
本当にいいのだろうか、この関係を続けて。そう思うのに――胸の奥に、また朝陽と離れるなんてごめんだとくちびるを尖らせる自分がいる。
せめて、祖父の言葉の真意を知るまで。もしくは、朝陽が飽きるまで。もう少し、この関係に甘えさせてもらおう。
どうしようもない兄でごめんな、朝陽。
届くことのない懺悔が、透明になって夜に溶ける。
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