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出会い
「おはよう、リサ。新聞をとってきてくれない? 」
朝食の支度をしていたお母さんが、寝ぼけまなこの、まだ小さなリサに言った。
「お父さんは? 」
「ジョンの散歩に行ったわよ。ついでにいつものミルクと、今朝はパンも買ってきてくれるって」
リサは玄関を開けて、外にある郵便受けを覗いた。
その途端、突風がざあっと吹き荒れた。
わっぷ!
リサは開いていた口に、何か飛び込んできたものを、そのまま飲み込んでしまった。
(どうしよう!! 何か飲んじゃった!! )
前に、お母さんが小さい頃、道を歩いていてあくびをした拍子に、飛んできた虫が口に入ってそのまま飲み込んじゃった、って話をしていたけど…。
虫、だったのかも…。
リサはさーっと血の気がひいた。
でも、飲み込んでしまったものは仕方ない。
リサは泣きたくなってしまったが、ふと、あたりに何かが、たくさん飛び散っているのに気がついた。
薄いベージュ色の、同じような封筒が、いくつも風に舞っている。
封筒のほかに、白い綿毛のようなものも、ふわふわと漂っていた。
その散らばった封筒を、道の向こうでひとりのお兄さんが、一生懸命拾い集めて袋に詰めこんでいる。
リサは、自分の周りにある封筒を拾い集めながら、お兄さんのほうへ近づいていった。
「あの、これ…」
「ああ…、ありがとう。助かるよ」
お兄さんはリサから封筒を受け取ると、ちょっとはにかみながらお礼を言った。
「これで全部かな…」
お兄さんは懐中電灯みたいなものを、封筒を集めた袋に近づけて確認した。
「ああ、そうだった。これは君のパパとママに」
お兄さんはそう言うと、ベージュの封筒をひとつ、リサに渡した。
「本当にありがとう。じゃあね」
バササッと、羽が羽ばたく音がしたと思ったら、小さな羽毛が飛び散り、お兄さんの姿はなくなっていた。
リサは家に入ると、郵便受けに入っていた新聞と一緒に、その封筒をテーブルの上に置いた。
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