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再会
リサが学校へ通うようになったある日の帰り道のことだった。
(あっ、あの人! )
あの時、ベージュの封筒を持っていたお兄さんがいた。
リサは急いで走って、お兄さんに近づいていった。
「お、お兄さん…! 」
「あ、君は…。まだ見えるのか。こんにちは」
「こ、こんにちは…。あのね、リサのママ、赤ちゃん、できたの」
リサは息を切らしながら言った。
「そう。それは良かったね、おめでとう」
お兄さんはにこりと微笑んだ。
「あ、うん、それで、あの…、あの時の封筒って…」
「ああ、あれね。無事に届けてくれたんだろ? ありがとう」
「あ、はい…」
「うん、じゃあね」
「あ、まって」
リサは、去ろうとするお兄さんを呼び止めた。
「うん? 」
「お兄さん、誰なの? 」
「誰って、配達員だよ」
「お手紙とか荷物の配達員さんは、制服が違うし、ベージュの封筒ばかりじゃないよ」
「あ、そうだね。うん、まあ、どのみち忘れちゃうし、いいか。
俺はね、コウノトリなんだよ」
「あの、赤ちゃんを運ぶ? 」
「うん。正確にはコウノトリ配達員。ベージュの封筒は、天からの赤ちゃんの授かりものだよ。
宛名になってる人だけが、封筒の中の手紙を読むことができて、手紙には授かる赤ちゃんの名前が書いてある。
でも、読むとそれを忘れちゃうし、封筒も消える。
それでママのお腹の中に、赤ちゃんを届けたことになるってわけだ」
「へえ…。じゃあリサも? リサも、お兄さんがママのお腹に配達してくれたの? 」
「ああ…。うん、そうかも。俺たちコウノトリ配達員は、君たちよりも時間がゆっくり流れてるからね」
「ゆっくり? リサよりも? 」
「そうだよ。リサちゃん」
「…お兄さんの名前は? 」
「名前か…。うーん、それは、秘密」
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