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知っている、ということ
「やっぱり、羽、飲み込んでたみたいだ」
「そうか。じゃあさっさと、取り出しちゃえよ」
ハドリの言葉に、お兄さんは渋った顔を見せた。
「でも、まだ、あの子は…」
「俺たちのことは、大人になっても見える人はいる。
そういう人と、心を通い合わせられれば、羽を飲み込ませて、一緒になることもできる。
でも、あの子の場合は、ただの偶然の、事故だろう? 」
カタン、カタン、と、目の前に、担当者ごとに仕分けられたベージュの封筒が落とされてくる。
それを各自で、地域別に棚に振り分けていく。
「いつまでも見えるままにしておくと、現実に生きられなくなったり、ほかの人たちから気味悪がられたりするぞ」
もちろんリサには、コウノトリのことを黙っているようには伝えてある。
ただ、それが、リサにとって、現実を生きていくうえでの負担になってはいないだろうか。
「飲み込んでる羽を取り出せば、全部忘れる。あの子の世界に、足をつけて生きていくことができるんだ」
“常識”や“現実”とは違う世界を知っていること。
それだけでじゅうぶんに、秘密を抱えて生きていくことになる。
そしてそれが、リサが生きている世界への不満や、そこからの逃避に傾かせてしまうこともある。
「あの子はまだ、恋も知らないんだ…」
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