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卒業1
「お兄さーん! 」
いつもの道で、リサに会った。
今日は少し、どこかが違う。
「お兄さん、私、今日、卒業式だったの」
「ああ、そうだったんだ。おめでとう」
「ありがとう。…それでね、卒業式が終わってから、私…」
リサは、言葉をつまらせた。
「何? どうしたの」
「…うん、あのね、昔、小さい頃に、私のことイジメてたスガイって男の子の話をしたのを覚えてる? 」
「ああ、覚えてるよ」
「あのスガイとね、ずっと学校が一緒だったんだけど、でも、今日…」
リサは、恥ずかしそうにうつむいた。
「私、告白されちゃって…。どうしたらいいか、わからなくて…」
リサの顔は真っ赤になった。
卒業証書を丸めて入れてある筒を持つ手も、ぎこちなく少し震えている。
「…そうだと思ったよ。好きな子のことは気になっちゃうからね」
「お兄さん、知ってたの…?」
「そうじゃないかと思ってただけだよ。
だからスガイくんは、リサちゃんの持ってるものが可愛いく見えて、リボンをつけてるリサちゃんが似合って見えて、気になって仕方なかっただろうな、って」
「…スガイ、私のこと、ずっと好きだったって言ってた」
「うん」
「ずっと見てた、って言ってた。少しでも会えたり、話せたりすると、嬉しかったって」
「うん」
「私のこと、考えるだけで、幸せだって」
「うん」
「だから、卒業しても、会ったり話したり、一緒にいたりしたいって…」
「…うん」
なぜだろう?
リサからスガイの想いを聞くたびに、息が苦しくなるように感じるのは…。
「…それで? 」
黙ってしまったリサに、尋ねた。
「それで、リサは? なんて答えたの?」
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