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卒業2
「私…、私は…」
リサはますます真っ赤になった。
ああ、そうか。
もう卒業だな。この子も、俺も。
羽を取り出したほうが良さそうだ。
でも、いいだろうか。
一応、リサに聞いてみてから…。
リサに向かって手を伸ばしかけた時、リサが叫んだ。
「私はっ、お兄さんが好きなのっ! 」
手が止まった。
空気が止まった。
心が止まった。
「スガイが、私に言ったこと…。
ずっと見てたり、少しでも会えたり、話せたりすると、嬉しかったってこと。
考えるだけで、幸せだったってこと。
ずっと好きだったってこと…。
私も、私も、ずっとお兄さんに、同じこと感じてた…。
だからっ…、お兄さんっ…」
リサが思いきって顔を上げた時、その唇に優しい口づけが降りてきた。
このくらい、いいだろう。
最初で最後だ。
どのみちこれで、リサは、忘れてしまう。
まるで最初に出会った時のように、突風がざあっと、ふたりの周りに吹き荒れた。
やがて風がおさまると、そこにはリサひとりしかいなかった。
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