第三王女の地味な私ですが、人の心が読めちゃうので婚約破棄して誰もいない所へ行きたいです

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「気持ちはよくわかった。確かに悪い噂から逃れることはできない。だが、俺もナヴィラのご家族も、君がどれだけ素晴らしい人物であるかを知っている。それではダメだろうか」 「エレバンス様、こちらのみなさまが思っている以上にデュカリオンの政治状態は劣悪です。女王反対派は、常に姉たちの暗殺をもくろみ、第三王女の地味で不細工で頭が悪くて剣術ばかりしている野蛮な私だけを生かそうとしていました。操り人形、傀儡政権にしやすいだろうと。逆に姉上たちは賢明なため、今後の邪魔になる前にさっさと消してしまおうと……」  エレバンスの顔から表情がなくなる。 「とは言いつつも、やっぱり息子を不細工な私にやるのはもったいないだとか、本当に私に王家の血筋があるのかあやしいとか、拾い子じゃないかとか、え、こんな不細工生かしておく必要ある?やっぱ殺っちゃう?とか聞くに堪えない噂ばかりです。それなのに私たちの前ではいい顔ばかりの嘘を並べ立て、毎日がエイプリルフールみたいな日常はもううんざりなんです。そんなときに結婚のお話がリポナスからあり、本当に感謝いたしました。やっとお姉さまたちの役に立てると。でも結局リポナスでも同じです。私が不細工なことでエレバンス様のご迷惑になります。エレバンス様がこんなにお美しいのに、お世継ぎが私に似てしまっては申し訳なくて夜も眠れません。お願いですから婚約を破棄して下さい」  エレバンスはじっと耳を傾けて聞いてくれていたが、何を考えているのかは全て聞こえていた。 (不細工不細工って言ってるけど、ナヴィラって不細工なの?デュカリオンでは不細工な部類なのか?一度も思ったことなかったけどな……国によって違うのか?というか、デュカリオンには馬鹿な貴族しかいないのだな。剣術もできて賢い王女なんてどこにでもいるものじゃないけど。だいたい婚約破棄必要ないだろ。政治状態が悪いのはわかったが、リポナスと友好関係があればデュカリオンで反逆が起きてもすぐに助けられる権力も軍隊もあるし、ナヴィラの家族も守ることができる。世継ぎの心配もしてくれてるみたいだが、俺との子どもを考えてくれてるってことだよな?子どもがナヴィラに似たら何が問題なのか。むしろ似てほしいんだが。俺に似たら、見ていて目がチクチクする棘のある赤ちゃんになるだろうから、もっと目に優しい外見になってほしいんだよな。ナヴィラも剣術ができるなら、子どもが男の子でも女の子でも、家族で稽古ができるし最高じゃないか。聞けば聞くほど婚約破棄する理由が見つからないんだけどどうしよう。何て引き止めたらいいんだろうか)  とりあえずナヴィラが思ったのは、目に優しい外見って何だろう……だった。 「……やはり婚約は破棄できない。もともと友好関係を結ぶ政略結婚だ。そなたが心配する気持ちはわかるが、俺がナヴィラもご家族も守ると約束する。リポナスを守る気持ちでデュカリオンを守る。だからこのまま結婚してもらえないだろうか(この機を逃したら、もう二度とこんな女性に会えない気がしてきたぞ)」 「……お、お言葉はうれしいのですが」  もうひと押しだ、勝利を目前にしてエレバンスは畳み掛けた。 「他に望みは?そなたの希望を受け入れるようにしよう」  こほん、と咳込み助け舟を出したのは侍女リリアナだった。
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