第三王女の地味な私ですが、人の心が読めちゃうので婚約破棄して誰もいない所へ行きたいです

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「エレバンス様は必ず約束を守られるお方です。ナヴィラ様のお姉様方も、ご両親も必ずや守って下さることでしょう」  さらにリリアナは、ナヴィラに近づき小声で囁くように言葉を付け足した。 「エレバンス様とご結婚なさいますと、他にも豪華特典がございます。夜会でのお衣装が、それはそれは勇ましく美しいのです。結婚式ともなればそれを超えてくること間違いなしです」 「……本当に?」  ナヴィラはごくんと生唾を飲み込んだ。 「ええ、本当です。さらにお色直しで様々なお衣装を見ることができます。さらにさらに王太子ミッタル様と並ぶと美しさが倍、いえ、倍どころではございません。百倍の美しさになります。むしろ目の毒です」  ナヴィラは頭を抱え込んだ。もちろんリリアナは嘘をついていない。リリアナの頭の中まで見えるようだった。ミッタル様とエレバンス様お二人の並ぶ姿が!  頭を抱えるナヴィラを見て、エレバンスは疑問符が浮かぶが、リリアナなら信頼できると思いそのまま見守ることにした。 「……リリアナ、大変よ」 「どうなさいました?」 「実は……」 「はい」 「私の姉上たちも、ミッタル様とエレバンス様に勝るとも劣らない美しさをもっているの。気品と風格も二人に匹敵するほどなのよ!」  リリアナは大きく頷いた。 「お噂は聞き及んでおります」 「つまり、結婚すれば四人並んだ姿が見れるかもしれないわ!」 「何と!そのとおりでございますね。お式で四人が勢揃いする可能性が高くなります!」 「ミッタル様とエレバンス様が並んで百倍の美しさ、四人が並んだら一体どうなるのかしら」  ナヴィラとリリアナは肩を並べ、揃いも揃って遠い目をしている。  エレバンスはその様子を見てまた疑問符が増えたが、やはりリリアナを信じているので見守り続ける。 「これは、もう、美しさの暴力ね」 「そうでございますね。これはもう、美しさのバイオレンスでございますね」 「……リリアナ、あなたも必ずお式に出てちょうだいね?一緒に四人が並ぶ姿を見て、美しさのバイオレンスを堪能しましょう!」 「本当でございますか!このリリアナ、感無量でございます。四人が並ぶ姿が見られたのならば、もういつ死んでも構いません……」  リリアナは床の上に座り込んで、泣き出してしまう有様だった。 「ダメよ、そんなこと言わないで。この四人が歳を重ねる姿を見たくないの?美しさの暴力は歳を重ねてもずっと続くのよ!」  リリアナは、はっとして顔を上げた。顔が水でてかてかと光って反射する。 「そ、そうですよね。すみません、取り乱しました」  ナヴィラは柔らかくリリアナを抱きしめた。 「えっと……よくわからないんだが、つまり、婚約破棄しなくてもいいってことか?」 「はい、エレバンス様さえよろしければ。地味で不細工な私ですが、剣術には自信があります。そんな私でよろしければぜひお願いいたします」  そう言われたときにはもう、地味とか不細工の意味がさっぱりわからなくなっていたエレバンスだったが、誠実に答えた。 「地味……?の意味がよくわからないし、不細工?……もちょっとわかりかねるが、たとえナヴィラがそうだとしても、そなただから結婚したいのだ」  かくして、侍女リリアナのおかげで婚約破棄を免れたエレバンスは、後にナヴィラとの間にたくさんの子をもうけ、 「目に優しくていいなあ」 と何度も呟いていたという。 (了)
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