嘘つきシンデレラ

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* * * *  不機嫌な紗理奈と薫以外のメンバーが盛り上がり始めた頃、二人はようやく顔を見合わせた。 「私ね、サプライズって嫌いなんです。相手の気持ちを全く考えてないと思いません? 喜ばないとしらけるし、でも無理矢理驚くのもおかしいし」  これは常々思っていたことだが、薫なら理解してくれそうな気がして話してみると、案の定薫は大きく頷いた。 「同感ですね。自身の行いを肯定するための(てい)のいい言い訳に過ぎないと思いますよ」 「あぁ、わかる。しかもエイプリル・フールは嘘をついていいとかあり得ない。それでどれだけ嫌な思いをしてきたことか」 「嘘は嫌ですね」 「本当。嘘って大嫌いです」  二人は互いの心を探るように観察し合う。私たちは嘘が嫌い。ならば目の前にいるこの人は本音で話す人だろうかーー。 「村重さん、もし良かったらゲームでもしませんか?」 「ゲームですか?」 「えぇ。タイトルをつけるなら"嘘をつかないゲーム"ですかね。嘘をついたら負け。これから話すことは全て真実だけじゃないといけません」 「うーん、でも私たち、お互いのことをまったく知りませんよ。話したことが嘘が本当かはわからないじゃないですか」 「もちろん、それは村重さんにお任せします。ただ僕は『真実を話そう』と言いました。それに対してあなたがどう答えるかはわかりませんが、とにかく今日この場で嘘であることがバレてしまったら、その時点で負けです」 「なるほど。つまり嘘をついても、バレなきゃいいわけですね。まぁどうせ暇だしいいですよ。やってやろうじゃないですか。ちなみに勝った方に特典はあるんですか?」 「そうですね……ベタに相手の言うことを一つ聞く、はどうですか?」 「よし、乗った。やりましょう」  エイプリル・フール当日に"嘘をつかない"ゲームだなんて面白い。その発想に紗理奈はワクワクした。 「じゃあ質問。四月一日さんは、自分の名前は好きですか?」  先に口を開いたのは紗理奈だった。 「はい、好きです。そのことをからかってくる人間はクソうざいですが。村重さんはどうですか? ご自身の誕生日は好きですか?」 「意外と好きですよ。特別感がありますしね。ただクラスで一番の最後の誕生日なので、友達に祝われた記憶はありませんが。今日だって合コンのついでじゃないですか」 「あはは! 確かにそうですね」  薫が笑った顔を見て、珍しく紗理奈の胸が高鳴った。最近は大好きな雑貨にしかときめかなくなっていたので、そんな自分自身に驚いた。
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