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紗理奈の自己紹介タイムがやってくると、
「村重紗理奈です」
と、一言口にして頭をちょこんと下げる。
白いふわっとしたニットに、ピンクのシフォンスカート、長い髪を右肩の上から緩く三つ編みをし、誰が見ても可愛い印象の紗理奈だが、明らかに不機嫌そうな表情を浮かべていたため、友人が慌ててフォローに入る。
「紗理奈ね、今日が誕生日なの! ねっ? だから誕生日パーティー兼サプライズ合コンなんだ〜」
「そうなの? おめでとう! なら盛大にお祝いしなくちゃね!」
何がサプライズだかーー紗理奈は誰もが聞こえる音量で舌打ちをした。
それを見ていた目の前の男性が、驚いたように目を見開いた。
「じゃ、じゃあ、最後はワタヌキ!」
ワタヌキは友人をキッと睨みつけると、大きなため息をつく。白いVネックのTシャツに紺のカーディガンを羽織り、メガネがキリッとした印象を与えていた。
「ワタヌキ薫です」
「コイツね、四月一日って書いてワタヌキなんだ! 珍しいだろ?」
「難読漢字みたいなのでやってたのを見たことある! こんな身近にいるなんてびっくりー」
いやいや、さっき会ったばかりで身近とかおかしいだろーー心の中でツッコミを入れた紗理奈の正面で、薫が不愉快そうにウーロン茶を飲み干した。それを見ながら、紗理奈はカクテルを少しだけ口に含む。
彼も私も似たようなタイプに違いない。何しろ大事な日を台無しにされているんだから。
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