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「でも何故出頭したんでしょうか。恨みのある人全員に復讐したから出頭したのでしょうか」
「いえ、犯人は他にも悪人がいたら犯行を続けるつもりでいました。現に犯人とは面識もない男も被害に遭っています。その被害者は結婚詐欺師でした」
「では何故出頭を?」
「犯人は次の獲物を物色していました。警察署の前で待ち構え、悪人が釈放されたところを襲うつもりでいました。しかしたまたま会った人が自分の犯した事件の容疑者として取り調べられていた事を知ったのです。その男と話をして、犯人は自分の間違いに気付き出頭したそうです」
「自分の間違い?」
アナウンサーがレポーターに聞いた。
「はい。警察は詐欺師や悪人を取り締まってくれない。だから自分が始末してやろうと犯行を繰り返しました。しかし男にいわれたそうです。こんな大きな事件があるから詐欺事件にまで手が回らないんだろうと。
自分は真逆の行為を行っていたと衝撃を受けたそうです。それで出頭したそうです」
「なるほど。罪が罪を呼び、大きくなったというわけですね」
そうして画面には犯人の顔写真が大きく映し出された。
「こ、この男……」
直人が警察署を出た時話しかけて来た男だった。あの時犯人は自分に狙いを定めていたのだ。一歩対応を間違えていたら自分も被害に遭っていた。直人は寒気を覚えた。
やはり正直に生きてきて良かった。そのお陰で殺されずに済んだ。その上犯人を出頭させる事ができた。自分の生き方が間違っていないと再認識した。
その時玄関のチャイムが鳴った。モニターを確認すると項垂れた女性が映っていた。友美だ。
帰ってきてくれた。直人はすぐに玄関に向かった。自分が犯人を出頭させる大手柄を立てた事を自慢したい気持ちでいっぱいだった。きっと友美は笑って聞いてくれるだろう。
〈終〉
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