直人

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「じゃあ自白したのは嘘だったというのか?」 「そうです。エイプリルフールの嘘です」 「家族、会社、同級生、近所。全員口を揃えてお前の嘘は聞いた事がないといっていた。だからお前は嘘なんてつくわけがない。お前がやったんだろう。素直に認めろ!」 「だからエイプリルフールの嘘なんです」 「そうか。じゃあやってないっていうのも嘘なんだな?」 「これは違います」 「それも嘘なんだろ? 今日のお前の言葉はみんな嘘だ」 「だから……」  どういったら信じて貰えるのだろうか。嘘なんてつかなければ良かった、慣れない事はするもんじゃない。直人はいまさらながら後悔した。 「いったいこの人たちは誰なんですか。僕と関わりのある人なんて1人もいませんが」  刑事は写真を指さし説明を始めた。 「こいつは投資家だ。投資セミナーもあちこちで開いている。そしてこの女はキャバクラの従業員だ。次は新興宗教の教祖らしい。次は市役所職員、最後は医者だ」 「僕は投資はやっていませんしキャバクラにも行きません。宗教は家のお寺と近くの神社に行くくらいです」 「市役所や医者は行くだろう?」 「殆どの人が行くんじゃないんですか」  とりとめのない取り調べだった。刑事は最初から直人を犯人扱いしている。取り調べが終わると直人は留置場に連れて行かれた。しばらくは家に帰れないと刑事から告げられた。
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