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直人
窓もなければ色もない。そんな小さな部屋に直人は居た。簡易な折りたたみの椅子は、ちょっと動いただけでギイと音がした。スチールの机の上には5枚の写真が並べられている。
「分かるよな?」
目付きの悪い男が直人を睨みつけた。
「分かりま……」
「とぼけるな!」
間髪を入れず男は怒鳴った。
「お前が殺した被害者たちだ」
「会った事もありません」
「しらばっくれるな!」
「僕は絶対に犯罪なんて犯していません」
「嘘をつくな!」
「嘘なんかじゃありません」
直人はまっすぐに男の目を見て言い切った。自信はあった。これまで真面目に生きてきた。生涯で1回しか嘘はついていない。そのたった1回の嘘、今朝ついた嘘のせいで直人は警察にいた。
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