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ある朝、体が動かなくて目が覚めた。ずしりと体の上に重みを感じる。恐る恐る重みを感じる場所に手を伸ばすと、フワフワの毛が手にふれた。柔らかいこの感触は……。
「華子ちゃーん! また野良猫を家に入れたでしょー!」
「うん、だってね、紫苑くん。猫ちゃんが入りたいって鳴いてたから、入れてあげたの」
「ダメだって言ったでしょ? ほら、もうこの子、家猫のごとくリラックスしまくりじゃん」
「かわいい~♪」
「……かわいいけどさぁ」
「紫苑く~ん、起きる時間よぉ」
「紫苑、ワシと走り込みにでもいくか?」
「紫苑さん、おはようございます」
一気に人数が増えた我が家は、常に騒がしい。が、嫌な騒がしさではない。
毎朝、家族総出で玄関で見送ってくれる。こういうの、しばらく家族と離れて暮らしていたせいか、なんだか少しくすぐったい。
「いってらっしゃ~い!」と手を振るみんなに、「いってきます」と、俺も手を振り返した。
今日はひとり暮らし希望の新規の幽霊のお客さまの予約が一件入っている。
あまりこだわりがない方だといいけど……ま、精一杯いい引越し先を探してみよう。
幽霊専門の不動産屋、西方紫苑は、今日もお客さまのために頑張ります!
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