〇〇専門不動産

2/10
前へ
/10ページ
次へ
宇良飯(うらめし)さん、登場の効果音は必要ありませんよ」 「ええー! せっかく紫苑くんのために、みんなで練習したのにぃ!」 「あ、あたし……口笛、ちょっと失敗しちゃったの。くすん」 「ワシの太鼓は完璧だったろ? ガハハ!」 「……ううん、微妙にリズムがずれてたよ」 「なにー!?」  依頼人、宇良飯家のみんなが口々に話し出す。 「はーいはいはい! ひとまず少し黙りましょう。俺のために頑張ってくれたのは、わかりました」  俺の言葉に、騒いでいた家族がニコニコと笑顔を向けた。 「紫苑くん、またきてくれて嬉しい! うふ♪」  目の前でなんだかよくわからないセクシーポーズをしているのが、宇良飯家の母、瑤子(ようこ)さん。 「見ろ紫苑、衰え知らずのワシの筋肉を!」  ピタピタのTシャツを着て、ボディービルダーがするようなポーズを決めているのが、宇良飯家の父、剛史(つよし)さん。 「紫苑くん……会いたかったよ」  猫のぬいぐるみを抱きしめて、上目遣いで俺を見つめているのが、宇良飯家の長女、華子(はなこ)ちゃん。 「紫苑さん、新たな住まい探し、期待しています」  眼鏡をかけて、分厚い本を小脇に抱えているのが、宇良飯家の長男、太朗(たろう)くん。  彼らの体は透けている。そう、宇良飯家は幽霊の家族。  俺は、幽霊専門の不動産屋なのだ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加