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「宇良飯さん、登場の効果音は必要ありませんよ」
「ええー! せっかく紫苑くんのために、みんなで練習したのにぃ!」
「あ、あたし……口笛、ちょっと失敗しちゃったの。くすん」
「ワシの太鼓は完璧だったろ? ガハハ!」
「……ううん、微妙にリズムがずれてたよ」
「なにー!?」
依頼人、宇良飯家のみんなが口々に話し出す。
「はーいはいはい! ひとまず少し黙りましょう。俺のために頑張ってくれたのは、わかりました」
俺の言葉に、騒いでいた家族がニコニコと笑顔を向けた。
「紫苑くん、またきてくれて嬉しい! うふ♪」
目の前でなんだかよくわからないセクシーポーズをしているのが、宇良飯家の母、瑤子さん。
「見ろ紫苑、衰え知らずのワシの筋肉を!」
ピタピタのTシャツを着て、ボディービルダーがするようなポーズを決めているのが、宇良飯家の父、剛史さん。
「紫苑くん……会いたかったよ」
猫のぬいぐるみを抱きしめて、上目遣いで俺を見つめているのが、宇良飯家の長女、華子ちゃん。
「紫苑さん、新たな住まい探し、期待しています」
眼鏡をかけて、分厚い本を小脇に抱えているのが、宇良飯家の長男、太朗くん。
彼らの体は透けている。そう、宇良飯家は幽霊の家族。
俺は、幽霊専門の不動産屋なのだ。
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