〇〇専門不動産

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「ダメ―! お風呂とトイレは別じゃなきゃ!」  水回りをチェックしていた瑤子さんが両手でバツ印を作って叫ぶ。   「……使いませんよね?」 「私たちは幽霊だけど、生きていたときと同じように生活したいの。妥協できないポイントなの!」 「古い物件で風呂とトイレが別って、なかなかないんですよー」 「ああん?」 「ちょ、下からなめるように(にら)まないでくださいよ。じゃあ……次にいきましょう」  二軒目。 「いいじゃねーか、ここ。にしても、うるせーなぁ」  剛史さんが部屋をぐるぐる歩き回り、耳に手を当てる。   「ここは楽器演奏可能物件で、うるさくてもお互いさまというのが条件なんです。ほら、皆さんってワイワイ騒ぐのが好きでしょう?」 「そうだな。でも、ワシたちは静かなところで騒ぐのが好きなんだ。ああ、ほかの住人が寝静まった夜中に騒げばいいか!」 「え! それは……えっと、次、いきましょう」  三軒目。 「思ったより狭いですね」 「く、暗すぎて怖いよぅ」  華子ちゃんが太朗くんの腕をぎゅっとつかみ、カタカタ震えている。  その後、何軒も物件をまわったが、全員が納得する物件は見つからなかった。  風呂とトイレが別の物件に絞ったために、手持ちの資料をすべて見終えてしまった。  そうだ。スマホにも物件データを送ってくれるってボスが言ってたっけ。  俺はポケットに手を入れてスマホを探したが、スマホが手にふれることはなかった。 「あれ? あ、バッグかな。え、ない。もしかして事務所に忘れた? あーもう!」 「どうしたんですか?」  太朗くんが俺の顔をのぞき込む。 「ちょっと事務所にスマホを忘れたみたいだから、取りにいってきます。そこで待っていてください」  俺は自転車を全速力でこいで、事務所に戻った。
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