〇〇専門不動産

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 事務所に入ると、人間のお客さまがカウンター越しにスタッフと話をしていた。  自分のデスクにあると思っていたスマホが見当たらず、家に忘れたのかなと思っていると、「ちょっと寒すぎるんで、冷房止めてもらってもいいですか?」というお客さまの声が聞こえてきた。 「紫苑……紫苑!」  お客さまに聞こえないくらいの声量で、ボスが俺を呼んだ。ボスを見ると、顎をくいっと動かして、事務所の入り口を見るように指示している。  指示通りに入り口を見ると、そこには宇良飯一家がずらりと並んでいた。 「でええ!?」  思わず大声が出た。 「す、すみません! すぐに冷房止めますんで!」  お客さまに謝って、俺はあわてて事務所を飛び出した。 「ちょっと皆さん! 待っててって言ったのに、なんでついてきたんですか?」 「だって、飛べばすぐだしぃ」 「自転車と競争したくなってな!」 「ひとりぼっち、いや」 「ついていったほうが効率的かと思いまして」 「……はぁ、わかりました。スマホ、自宅に忘れたみたいなんで、いったん自宅にいきます」  宇良飯一家を連れて、事務所から徒歩すぐの自宅へ向かった。
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