〇〇専門不動産

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 俺はボスのつてで、借り手がつかなくて困っていた古民家を格安で借りている。 「とっくん、ただいま~」  俺がガラリと玄関の引き戸を開けると、天井につきそうなくらい巨大な黒いかたまりがゆっくりと動き出した。 「なんだありゃあ!?」 「とっくん。土地神さまだよ」 「土地神さまぁ!?」  剛史さんと瑤子さんが、驚いた様子で声をあげた。 「今玄関がある場所には、とっくんが(まつ)られていた(ほこら)があったんだ。祠を壊して、この一軒家が建てられたんだけど、新しい祠を作ってもらえなくて、この場所に留まるしかなかったんだって。で、今は俺とシェアして暮らしてる」 「怖く、ないの?」 「ああ、全然。視える俺には無害なんだけど、視えない人間には、謎の圧迫感でストレスがたまって住み続けてると体調を崩しちゃうらしいんだ。基本はこの玄関にいることが多いけど、とっくん、家の中をあちこち移動するから」 「土地神さまとのシェアハウスだなんて、シャレてるねぇ」 「そうですか? とりあえず皆さん、あがってください」  宇良飯一家が物珍しそうに俺の住む一軒家を見てまわっている間に、俺は自分のスマホを探した。  スマホは布団の中にあった。目覚ましアラームを止めて、そのまま放置していたらしい。  ボスから送られてきた物件データを確認して、宇良飯一家に声をかけようと顔をあげると、至近距離に瑤子さんの顔があった。 「うわああ!! な、なんですか瑤子さん!」 「紫苑くん、私決めたわ」 「なにを、ですか?」  瑤子さんの唐突な謎の宣言に、俺は首をかしげた。
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