15人が本棚に入れています
本棚に追加
「引越し先よぉ!」
「……? ああ、この物件が気に入ったってことですか?」
俺は瑤子さんに、スマホに表示された物件データを見せた。
「違う違う~! ここ! 紫苑くんの家に引越してきて、シェアハウス仲間になるってことよぉ♪」
「……ええー!? ちょ、ま――」
「こっちこっち、紫苑くん」
瑤子さんが先導して、俺を別の部屋に導く。
フンフンと荒い息を吐きながら、筋トレをする剛史さんの姿が視えた。
「この部屋は広いから、トレーニングルーム♪」
「いや勝手に決めないでください! 今は広くても、とっくんが移動したら居場所なくなりますよ!」
「ううん、大丈夫よぉ。あれ見て♪」
居間の隅で、キャッキャと楽しそうに笑う華子ちゃんがいた。
「華子ちゃんと……と、とっくん~? どしたの、分裂して小さくなって!」
「とっくんにね、猫ちゃんくらい小さくなれる? って聞いてみたら、少し小さくなってくれたの」
うふふ、と嬉しそうに華子ちゃんが話す。
とっくんは、大型犬くらいの大きさになって、体が軽くなったからか動きが速くなっていた。数が増えて、わちゃわちゃと動き回っているから、まるで大型犬を多頭飼いしているようだ。
「華子ととっくん、仲良くなったみたいなの♪ それから、あれ!」
瑤子さんが窓の外を指さした。
「学校があるじゃない? 太朗が図書室で本が読めるって喜んでるのよ」
「好きなときに本が読めるって、最高ですよね」
太朗くんが、期待に満ちたまなざしで俺を見つめる。
はぁ……と俺はため息をついた。
「お風呂とトイレは別だし、部屋数も十分あるし……本音はもっと古いほうが好みだけど、そこは妥協してあげるわ♪」
瑤子さんが、満面の笑みを浮かべた。
最初のコメントを投稿しよう!