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回葬電車
「回葬電車」
心臓移植が必要になった女の子、山本ハルカちゃん(10歳)が両親と共にやって来たのはアメリカ。
同じ病院で手術待ちをしている車椅子に乗るメルシーちゃん(12歳)と仲良くなったハルカはお互いに心臓移植が無事に済んだら何がしたいとか何が食べたいとかを語り合っていた。
ある時、メルシーが不思議な話をする。
この街の地下鉄にはある日時に楽園へと行ける電車があるのだと。
ハルカはそんな電車があるならいつか2人で乗ってみようと言う。
数日後、ハルカは夜にメルシーが歩いて自分の病室まで来たのに驚く。
「例の電車、今から行けば乗れるよ!」
素足でパジャマ姿のまま、何故か軽い体でメルシーに手を引かれるがままハルカは一緒に走り出す。
そして駅に来たこげ茶色の木製車両の最後尾に乗り込む。
しばらく電車はアメリカの地下を走る。
時々停まる名も聞いたことのない停車駅では何人かの乗客が乗ってくるが降りていく者はいない。
だんだん混んでいく車内。
しかし、明かりがどんどん暗くなり変な臭いがしてきた。
足元をふと見ると赤いぬるぬるした液体が足裏に流れてきた。
後ろを振り返ると…
沢山の死者に襲われながらもハルカとメルシーは先頭車両の運転席を目指す。
ハルカは途中何度もピンチになるメルシーを助ける。
最終的にメルシーは運転席で打ち明ける。
「ほんとはね、ハルカが移植する心臓…私の番だったの。
悲しかった…だから一緒に地獄に行くこの回葬電車に乗ってもらったの。
でも…もういいや」
メルシーはブレーキを引き、電車を停める。
そして運転席のドアを開けるとハルカを駅に無理矢理追い出す。
「ありがとうハルカ。
さようならハルカ」
メルシーはそのまま電車に乗って行ってしまう。
通り過ぎる電車の窓からはゾンビの乗客がハルカを掴もうと手を伸ばしている。
そこで目を覚ますハルカ。
いつもの病室。
無事に心臓移植が終わってハルカはメルシーを探すが見当たらない。
メルシーの兄を見つけ、話を聞くと
メルシーは自分で生命維持装置の管を抜いて亡くなったそうだ
本当はメルシーが先だった手術。
でも、メルシーはハルカに心臓を譲るために自ら…
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