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『デスワーム対ベルティジャン』を観た感想。
うーん、と伸びをする。今日はモールへ彼氏とデートに来た。映画を観終えて、喫茶店で一息入れようとなったのだ。ちょっと腰が強張っちゃった。思い切り腕を突き上げる。丁度そこへアイスティーが運ばれて来た。慌てて姿勢を戻す。タイミングが悪いですね、とテーブルの向こうで綿貫君が微笑んだ。いいの、と少し照れながら応じる。
「しかし面白かったわね、デスワーム対ベルティジャン。海外の特撮はやっぱりCGのレベルが高い!」
さっき観た映画に感心する私とは対照的に、うーん、と綿貫君は首を傾げた。
「面白く無かった?」
「いえ、確かに映像は綺麗でした。でもやっぱり俺は火薬派だなぁ」
「あぁ、特撮は実際に爆発させる方が好きなんだっけ」
「そうなのです。CGは滅茶苦茶綺麗だったし迫力もありました。そこにかける手間暇も理解はします。ただ、好みは実写の火薬なのです」
「君は火薬職人さんを尊敬しているのだものね」
「よく覚えていましたね」
「勿論」
彼氏の好みを忘れるわけないじゃない。
「まあパンフレットを買うくらいには楽しみましたが」
「バッチリ嵌っている! なによぅ、イマイチみたいな反応をしておいて」
テーブル越しに軽く額をつつく。へへっ、と白い歯を見せた。
「とんでもストーリーは頭を空っぽにして楽しめたので良かったです」
彼が鞄からパンフレットを取り出し、あらすじの頁を開いた。一緒に覗き込む。
『西暦三千八百五十九年。超巨大モンゴリアン・デスワームの出現により、地球の環境は激変していた。旺盛な食欲に突き動かされ、都市部の建造物から森林区域の緑まで食べ尽くすデスワーム。挙句、環境コントロール装置まで食べられ、地球の各所では未曽有の大災害が起きていた。対デスワーム用専用兵器を開発すべく、全世界の頭脳とテクノロジーを結集させられるのであった。ミッション名は「コード6」。そして兵器の名は「ベルティジャン」。希望の意味を冠された最強ロボットに乗り込むのは、空軍の若きエースパイロット、ロディ。オペレーターとして同情するミサキと協力し、今、モンゴリアン・デスワームとの死闘が幕を開ける!』
馬鹿みたいね、と率直な感想を口にする。
「実際、馬鹿みたいな話だったじゃないですか。今より倍近く西暦が進んでいるのに街中があんまり変わっていなかったし。科学はめっちゃ進歩したはずなのに、未だに乗り込むタイプのロボットだったし。おかげでロディもミサキも大怪我したし。これなら二千四十年くらいの設定で良かったですよ」
「環境コントロール装置の破壊と未曽有の大災害を描きたかったからでしょうねぇ。確かに嵐のCGは凄かった」
「それは確かに。おかげでストーリーはズタボロでしたが、ベルティジャンとモンゴリアン・デスワームの戦いはアクションもアングルも良かったんだよなぁ」
「でも最後、ベルティジャンが自爆したじゃない。あの爆発の規模だと、脱出したロディも先に逃がされたミサキも巻き込まれていたと思うのだけど」
「そういう粗を探してはいけない映画です。言ったでしょ、頭を空っぽにして楽しむものだって」
「そっか、野暮だったわね。失礼」
その時、一つ思い出した。あとさ、と言いながら頁を捲る。キャスト紹介のところを開いた。小さく映っている男の人を指差す。綿貫君が吹き出した。
「ね。この名も無きオペレーター、田中君にそっくりよね」
綿貫君の親友にして、私の後輩でもある彼の名を出す。気になってました、と肩を震わせた。
「私も、途中で気付いてからはずっと引っ掛かっちゃって」
「思いましたよ。田中が見切れてんなー。今は顔が半分しか映ってないなーって」
「やっぱりそうよね。私だけじゃなくて良かった」
「俺らにしか出来ない楽しみ方ですね」
「ホントね」
ちょっと特別な感じがして胸が暖かくなる。
「ま、割引価格で観るにはこの上なく丁度いい映画だったかな」
「そうですね。一日割のおかげで一人七百円も安く観られました」
「丁度、ここの喫茶店代が浮くくらいか。お得~」
アイスティーを啜る。綿貫君もホットコーヒーを口に含んだ。ほっと一息つく。いい休日ね。娯楽に楽しく触れた後、好きな相手とのんびり過ごすなんてこの上ない贅沢だ。
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