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不毛なやり取りと素直な気持ち。
『しつけぇな! 君には関係無いだろ!?』
『味噌ラーメンが好きなんだとか、小食をいじるなとか、散々俺を責めておいて自分だって恭子さんを怒らせたんじゃないですか!』
『畜生、ブーメラン発言ってのはこのことか』
『さあ、お詫びに何をやらかしたのか教えなさい!』
『絶対に嫌だ! デリケートな問題なんだ!』
『じゃあ尚更、そんなことで恭子さんに嘘を吐いてからかった葵さんは悪い!』
『わかっているよ!』
『その上、俺を責めるなんて』
『しつこい男はモテねぇぞ』
『いいですよモテなくて。葵さんを責め立てるためなら全然オッケー』
『どこまでひねくれているんだお前は!』
『貴女にだけは言われたくない!』
モールからの帰り道、電車を待つ間にちらっと覗いたメッセージ・アプリには通知が六十件来ていた。未読のやり取りの序盤を見て、すぐに画面を閉じる。綿貫君、と正面から彼の目を見詰めた。
「私達は正直者でいましょう」
「急に何です? 言われるまでもありませんが」
「後でメッセージを確認して。嘘吐きでひねくれた人間がどれだけしょうもない末路を迎えるか、模範解答が出ているわ」
いそいそと綿貫君がスマホを開く。そして、あぁ、と小さく声を漏らした。
「早く四月二日になりませんかね」
「あと六時間の辛抱よ」
「恭子さんと一緒ならあっという間だ」
「もう、綿貫君ったら」
ほらね、絶対に素直で正直な方が楽しいわよ!
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