5話 新しい日常

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 ***  翌日はダイナの記念すべき初出勤日だ。『カフェひとやすみ』の開店は午前7時半、開店時間までに朝食メニューの仕込みや店内の掃除を終わらせなければならないから、必然的に出勤時刻は早くなる。 「ダイナちゃん、おはよう。今日からよろしくね。早速だけど店内の箒がけとお花の水遣り、それと本日分の食材の蔵出しを頼めるかしら」  まだ眠気眼のダイナにそう告げる者は、雑巾片手にハツラツと動き回るヤヤ。口調はのんびり調子のヤヤであるが、その動きは若人と見紛うばかりだ。  厨房ではヤヤの夫であるベリルが一足早く朝食メニューの準備にあたっている。    ダイナが言いつけられた仕事を終えたとき、店内にはぽつぽつと客人が見え始めた。開店時刻の午前7時半を回り、手軽な朝食を求める人々がカフェへとやってきたのだ。  この頃になると、ダイナは料理の注文を受けることと、そして厨房ででき上がった料理の配膳で大忙しだ。テーブルが5つしかない小さなカフェだから、混雑といっても知れている。それでも頻繁に入れ替わる客人が料理にデザート、食後のコーヒーを頼めば仕事量はかなりのものだ。  目が回るほどの忙しさであった開店直後、しかし日中は比較的落ち着いていた。30分に一人ふらりと客人がやって来ては、コーヒーと菓子を嗜んで帰って行く。昼食時こそ人の出入りは増えるが、午後1時を回ればまた客人はぱたりと途絶えてしまう。15時頃に菓子を求める客が数人訪れて、また暇になる。そして17時丁度に閉店だ。
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