7話 ダイナと友達

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7話 ダイナと友達

 神具の大口注文を受注したことにより、ダイナの日常は更に忙しくなった。起床時刻は5時半で、簡単な身支度をして下宿所を出る。6時半には『カフェひとやすみ』に着き、ヤヤが用意してくれた朝食を食べた後は、一息つく間もなくカフェの開店準備だ。  朝食時の混雑を乗り切った後は、皿洗いもそこそこに隣接された工房にこもり、大量注文された神具の製作作業。11時半を目途にカフェへと戻り、ヤヤとベリルと3人で昼食時の混雑を乗り切ったかと思えば、ヤヤの作ってくれた握り飯をかじりながらまた工房にこもって神具の制作作業。  そのまま工房で午後を過ごし、17時の店じまいの後、ヤヤの作った賄いをいただく。神力を使い果たし半ば失神状態で下宿所へと戻り、シャワーを浴びて泥のように眠る。    ダイナの神力では一度に多くの神具を作ることはできない。だから紫紺の客人に大口注文を受けてからというもの、もう3週間もそんな日々が続いている。 「ダイナさぁ。少し休んだ方がいいんじゃない? 顔が青白いよ」  コーヒー片手に心配そうな顔をする者は、ルピという名の女性だ。年はダイナより少し上、濃い桃色の髪に、それと同じ色合いの瞳をしている。 「でも早めに納入して欲しいと言われているの。折角受けた大口注文だから、頑張らないと……」 「あたし、神具作りのことは何も知らないけどさ。結構神力使うんでしょ? どんなに頑張ったって途中で倒れたら意味ないよ。一日休みをもらって、部屋でゆっくりしていれば?」 「うーん………でももう納入の目途は立っているし、ここまで来たら全部作り切っちゃいたいんだよ。そうしたら気兼ねなく休めるから」 「ふぅん、真面目だねぇ」  ルピはダイナと同じ下宿所に暮らしている。3食を『カフェひとやすみ』でとるダイナは、下宿所の者と顔を合わす機会はあまりない。しかし廊下ですれ違えば挨拶くらいはするし、同性であれば下宿所の共同浴室で話をする機会はある。ダイナとルピは、そうして浴室で顔を合わせるうちに仲良くなったのだ。
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