7話 ダイナと友達

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 ルピは、ダイナにとって神都で初めての友人だ。ダイナが「カフェで働いている」という話をしてからというもの、ルピは週に2回程度、仕事の休み時間にダイナを訪ねてやってくる。2人の交友関係はヤヤも知るところであるから、いつの間にやら『ルピ来訪時はダイナの休み時間』という独自ルールが出来上がった。  今日も神具の製作中、ダイナはヤヤに呼び出され、こうしてルピと一緒に大好きなミルクティーを飲んでいるという経緯だ。 「ダイナさ。神具製作が一区切りしたら買い物に行こうよ」  ダイナはこてりと首を傾げた。   「何を買いに?」 「可愛い服とか、靴とか、カバンとか色々。目いっぱいお洒落してさぁ、美味しいご飯でも食べに行こう」 「お洒落……」 「そうそう。ダイナ、いっつも同じ服を着ているでしょ。せっかく神都に来たんだから流行り物を買えば? 髪形も流行り風にしてさぁ。似合うと思うけど」  ルピは、だらしなく伸びたダイナの前髪を指さした。神都にやって来てから早1か月半。1か月半国家の中心地で暮らしているというのに、ダイナの服装は神都に出て来たその日のままだ。飾り気のないワンピースと平靴。散髪にも行っていない。    お洒落かぁ、とダイナは呟いた。  愛する人のために着飾った日々。想いと共に焼き捨てた衣服。可憐なドレスに身を包んだ己の姿を想像すれば、心臓がつきりと痛む。まだ傷は癒えていない。 「……服はまだ、いらないかな」  ダイナの小さな声に、ルピは気にした様子もなくそう、と頷いた。    ダイナが大失恋を経て神都へとやってきたことをルピは知っている。結婚を目前にしていたこと、貧相な体型を理由に捨てられたこと、大失恋の経緯を詳細に語ったわけではないけれど。  しかし聡いルピは、ダイナの言葉の真意を正しく掴み取ったようだ。 「その気になったら声を掛けてよ。買い物ならいつでも付き合うからさ」 「ありがとう」  2人は顔を見合わせて笑った。
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