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11話 厄日…?
サフィーが『カフェひとやすみ』を立ち去った後、ダイナはヤヤに頼みその日一日を休日とした。ヤヤは不思議がったが、「誰でも休みたいときはある」とのベリルの援護もあり、突然の有給申請は無事受け入れられたのだ。とはいえ意気消沈のダイナができることなど多くはなく、店の片隅で読書の真っ最中。テーブルの上には大好きなミルクティー。大好きな場所で、大好きな本を読み、大好きなミルクティーを飲む。心の回復にはそれが一番だ。
そして本日2つ目となる予想外の出来事が起きたのは、ダイナが3杯目のミルクティーを空にした頃のことであった。
突然、目の前に人の気配を感じ、ダイナは視線をあげた。そして驚いた。年季が入ったテーブルの向こう側にアメシスが腰かけていたからだ。
ダイナはちらりと店内を見やった。午後2時を回った今、店内のテーブルはほとんどが空席だ。つまりアメシスは他に席があるにも関わらず、ダイナとの同席を選んだことになる。
「アメシス様、こんにちは」
「……ああ」
何か用事があるのだろうかと、ダイナは続くアメシスの言葉を待った。しかし予想に反してアメシスは口を開かない。ダイナは首を傾げ、読みかけの本へと視線を戻す。
かちこちかちこち。静かな店内には時計の音が響く。
ダイナが次に視線をあげたとき、アメシスは仏頂面のままコーヒーを飲んでいた。コーヒーはヤヤが運んできた物だ。ダイナに神具の大口注文してからというもの、アメシスは『カフェひとやすみ』の常連となりつつある。小さなカフェだから、常連になれば注文せずとも好みの飲み物が運ばれてくるのだ。
ダイナは恐る恐る口を開いた。
「アメシス様、私に何かご用でしたか?」
「……いや、特に用はない」
「そうですか……」
それきりまた会話は途絶えてしまう。
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