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2話 さよなら恋心
ダイナの住まう土地は、神国ジュリの片隅に位置する人口が1000人ほどの村だ。役所と、学び舎と、いくつかの商店があるだけの小さな村。
その小さな村の一角で、ダイナとダイナの父は小さな神具店を営んでいた。神具店には工房が併設し、ダイナと父は休みのたびにここで神具を作るのだが、店の売れ行きは芳しくない。
というのも、売られる商品がいささか地味であるためだ。ダイナと父は微量の神力しか持たず、武器に加護を与えるなどの派手な真似はできない。せいぜい手持ちの文具に少し便利な効果を与える程度のものだ。
だからダイナの父は神具店の一角をカフェスペースにして、コーヒーや紅茶、茶菓子を提供している。神具店に閑古鳥が鳴いていても、日々一定額の売り上げは稼げるという寸法だ。
そうはいっても神具の売り上げが伸びなければ、当然生活は楽ではない。
「婚約破棄? なぜ突然そんな話になったんだ」
ダイナの父――ユークレースはそう言って声を荒げた。
場所は神具店の2階に位置する小さなリビング。年季の入ったダイニングテーブルの上には、夕食と呼ぶには質素な2人分の食事が並んでいる。
「クロシュラ様は他に好きな方ができたんですって。だから私との婚約はなかったことにして、神都にはその女性を連れて行くって」
ダイナの婚約者であったクロシュラは、元々の村の住人ではない。所属は神国ジュリ神都隊、位は部隊長。元の住まいは神国ジュリの中心地となる神都であるが、対魔獣相手の戦績を積むために、3年の任期付きでダイナの村に滞在しているのだ。
そして、間もなく任期は明ける。クロシュラは3年間の実戦経験を得て、大手を振って神都に帰ることができる。ダイナはクロシュラの結婚相手として、一緒に神都へ行く予定だったのだが――
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