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13話 初デート
明朝、ダイナとルピは神都の一角にある美容室を訪れていた。散髪用の椅子が2つあるだけの小さな美容室だ。ダイナが散髪用の椅子に腰かければ、ルピは右手に持ったハサミをくるくると回す。
ルピの本職は美容師であり、散髪に加えヘアアレンジや化粧もお手のもの。敏腕美容師の手にかかれば、野暮ったい田舎娘を姫君に変身させることは簡単なのだ。
「じゃあ、切るからね」
ルピの合図に、ダイナはこくりと頷いた。しゃきり、と音がしてダイナの前髪が切り落とされる。次の瞬間。
「きゃあああああっ!」
静寂を切り裂くダイナの悲鳴に、ルピはあわやハサミを取り落とすところだ。
「何、何々⁉」
「ま、前髪。前髪が……!」
「え、もしかして前髪は切っちゃいけなかった? そういう要望は先に伝えてよね」
「前髪を切ることは構わないんだけど……でもこんなに短く切るなんて……」
ダイナは散髪用マントから右腕を出し、ハサミを入れたばかりの前髪をつまみ上げた。ほんの数秒前まで目元にかかっていた銀色の前髪は、今は眉毛が見えるほど短くなってしまっている。
そういうことか、とルピは安堵の表情だ。
「このくらい短い前髪が最近の流行りなんだよ。街でよく見かけるでしょ? ぱっつん前髪の女の子」
「そ、そうなの? でもこんなおでこ丸出し」
「ごちゃごちゃやかましい。ダイナは可愛い顔をしているんだから、少しでも顔を広く見せた方がお得だよ? ほら、前を向いて。今日は予定が盛だくさんなんだから、急がないと約束の時間に遅れちゃうよ」
現在時刻は午前8時を少し回ったところだから、デート開始時刻までは残り3時間を切っている。その間に散髪を済ませ、ヘアアレンジと化粧を済ませ、さらにデート用の服も買いに行かなければならない。靴やアクセサリーに至るまで一式だ。
早く早くと急かされて、ダイナはようやく大人しく前を向いた。ルピはハサミをくるりと回し、もっさりと伸びた銀色の髪を梳いていく。
しゃき、しゃきしゃき。軽やかな音が響く。
***
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