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神都の中心部にある大通りの片隅に、ダイナはそわそわと落ち着かない様子で立っていた。ダイナの背後には、神国ジュリを興したとされる女神像の銅像がある。銅像の周りは一帯が小さな園庭のようになっていて、ダイナと同じく待ち合わせをする人々で溢れていた。
間もなくダイナの目の前に一人の男性が現れた。太陽光を浴びて煌めく紫紺の髪に、同じ色合いの紫紺の瞳。ダイナの待ち合わせ相手であるアメシスだ。
アメシスはきょろきょろと辺りを見回しながら、女神像へと近づいてくると、何も言わずダイナの真横に立った。ダイナがそこにいることに気がついていないのだ。ダイナは迷った挙句、小声で挨拶をした。
「アメシス様……こんにちは」
アメシスはダイナを見て目を丸くした。
「……もしやダイナ殿か?」
「はい、ダイナです」
「失敬。いつもと印象が違うものだから、別人かと思った」
冷静を装ってはいるがアメシスはかなり動揺している。
そんなに違うだろうかと、ダイナはワンピースのすそを撫でた。ダイナが着ているのはルピに選んでもらった薄桃色のワンピースだ。柔らかな絹地のワンピースは全体に花の刺繍があしらわれていて、腰回りが真っ白なリボンで引き絞られている。人混みを歩きやすいようにとスカートの丈は膝より少し長い程度。そこに薄地のタイツを合わせ、靴はワンピースと同じ薄桃色のカジュアルパンプスだ。
長い銀髪は丁寧に編み込まれ、後頭部でひとまとめにされている。前髪は最近流行りのぱっつんだ。加えてルピが時間を目いっぱい使って化粧を施してくれた顔は、「どんな男もイチコロだね!」とのお墨付きである。
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