18話 想い繋ぐ

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18話 想い繋ぐ

「ア、アメシス様。どこでこの耳飾りを?」 「耳飾りを購入した宝飾店で、遺失物として保管されていたんだ。なんでも大通りの道端に落ちていた物を、通りすがりのご婦人が届けてくれたらしい。神都で販売される宝飾品には、偽造や転売を防止するために、販売店独自の刻印が押されている。宝飾品に知識のある物が見れば、どこの店で買った物かがすぐにわかるんだ」 「はぁ……」 「この耳飾りが私の手に渡ったのも幸運が重なっての出来事だ。恥ずかしい話だが、ダイナ殿と出掛けたあの日、耳飾りを買うだけの持ち合わせがなかったんだ。だから店に事情を説明して代金を後払いにしてもらっていた。そうしていざ代金の支払いに赴いてみれば、私の購入した耳飾りが遺失物として届いているではないか。何たる幸運と、店員と顔を見合わせ笑ってしまった」 「……はぁ」  購入した商品の代金を後払いにするというのは通常であれば有りえない。耳飾りを拾ってくれたご婦人が宝飾品について無知であれば、販売店には届けられなかったかもしれない。耳飾りがアメシスの手に戻ってきたのは、幸運に幸運が重なって起きた出来事なのだ。    アメシスから紫水晶の耳飾りを受け取って、ダイナはへなへなとその場に座り込みそうになった。  失せ物探しの神具など作る必要はなかったのだ。2週間物あいだ工房に引きこもる必要も、仕事を投げ出しヤヤに面倒をかける必要も、神力切れで床に転げ落ちる必要もなかった。ただいつも通りの生活を送っていれば、耳飾りはダイナの元へと戻ってきたのだ。 「それでダイナ殿。あなたは何をそんなに急いでおられた? 神具作りは終わったのか?」  アメシスの質問に、ダイナは放心気味でうなずいた。   「……はい、終わりました」 「ではそのガラス玉が新しい神具か。どのような効果を持っている?」 「これは失せ物探しの神具です。台座の内部が空洞になっていて、そこに入れられた物と同素材の物体を探し出すことができるんです」  ダイナが台座のふたを開ければ、中からは耳飾りの片方が転がり落ちる。ダイナはその耳飾りを手のひらで受け止めた。小さな手のひらの中に、ようやく揃った対の耳飾り。
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