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アメシスが腕に込めた力をゆるめれば、ダイナは足取りおぼつかなく後ずさった。離れて初めてその表情が明らかになる。銀色の眼は溢れるほどに潤んで、左右の頬は完熟林檎のよう。まだ夕焼けには早い時間だが、まるでダイナの顔にだけ夕陽が射したようだ。
「アメシス様、私はあなたが好きです。突然すぎて整理ができないけれど多分そういうことなんだと思います。だってそうじゃないと――」
ダイナは一度口をつぐみ、乾いた唇を舌先で舐めた。
「今、こんなに幸せなはずがないもの」
そう言って花が咲いたように笑った。その笑顔があまりにも愛しくて、アメシスはダイナに向かってまた腕を伸ばすのだ。
熱く火照ったダイナの身体がアメシスの腕の中へと飛び込んでくる。
愛おしい。今までに感じたどのような感情よりも強烈に、腕の中の少女が愛おしい。
「……ダイナ殿。触れてもよろしいだろうか、唇に」
アメシスがそう問えば、ダイナはうなずき背伸びをした。アメシスの方が遥かに長身なのだから、ダイナが精いっぱい背伸びをしてようやく、2人の吐息は混じり合う。
「どうぞ……何度でも」
ささやく小さな唇に、引き寄せられるようにしてキスを落とす。
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