終話 想い繋ぐ紫水晶

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「あとは……神都隊の関係者がまだ見えていないね。隊長と副隊長が来られる予定になっているんだけど」 「神都隊……」  ダイナの肩が跳ね、耳朶にあるダイヤモンドの耳飾りが揺れるた。どうしたのだろうとルピが口を開きかけたとき、部屋の扉を開く音が聞こえた。間もなくして部屋に入って来た者は、揃いの鎧を身に着けた2人組だ。鎧の胸元に刻まれたサカキの花は、彼らが神都隊に属する者であるということを示している。 「ダイナ王妃殿下。参上が遅れ申し訳ございません。大規模な人事異動あったものですから、隊員の統制に時間を取られてしまいました。しかし準備にこそ時間はかかりましたが、パレードの最中は我々が命を賭して国王陛下と王妃殿下の御身をお守りさせていただきますゆえ。どうぞご安心ください」  ハツラツと告げる者は、金茶髪の青年だ。髪と同じ金茶色の双眸(そうぼう)は力強く、腰に差した長剣はよく使い込まれている。その青年こそが、栄えある神都隊隊長の任に着く人物だ。  そしてその傍らに立つ灰色の髪の女性、彼女が神都隊の副隊長である。  金茶髪の青年と、灰髪の女性。2人の人物を交互に眺めていたダイナは、やがて遠慮がちに口を開いた。 「大規模な人事異動と仰いましたが、副隊長がお代わりになりましたか?」 「ええ、その通りです」 「前副隊長殿はいかがされたのです。ひょっとして怪我による退役ですか?」 「いえ、そうではございません。副隊長としての素質に疑義が生じ、降任処分の上、地方へと更迭されております」 「更迭……ですか。何か問題を起こしたのでしょうか」 「問題を起こしたというよりは、日頃の勤務態度が不真面目であったと申しましょうか。前副隊長――クロシュラは数か月前に神具師の女性と結婚しました。それだけならばもちろん喜ばしいことなのですが、結婚相手が作った加護付きの神具で全身を固め、日頃の訓練を怠るようになったのです。副隊長たるものが訓練をさぼったとなっては他の隊員に示しがつきません。除隊の話も持ち上がりましたが、隊員時代は真面目な男でしたからね。改心の余地が十分にあるということで、地方左遷処分に落ち着いたのです」  神都隊の隊長がはきはきと語る最中、ルピはダイナの表情をうかがい見た。ダイナの質問の意図が気にかかりながらも、2人の会話に口をはさむ勇気はない。
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