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4話 いざ就職活動
簡単な昼食を終えたダイナは、青年に言われたとおり大通りの南側のエリアへと向かった。そこには確かにたくさんの神具店が軒を連ねていて、通りを歩く人の姿も多い。
ダイナが目についた神具店へと足を踏み入れると、白で統一された店内にはたくさんの商品が並べられていた。 『効果実感・魔獣除けの首飾り』『これであなたも匂い美人・魅了の香り袋』『有名神具師の加護付き・退魔の籠手』中々の宣伝文句である。
やがてダイナは、陳列棚の間に男性店員の姿を見つけた。
「すみません……私、仕事を探しているんです。この店で神具師として働くことはできませんか?」
男性店員がゆっくりとダイナを見た。
「自作の神具はお持ちいただいておりますか?」
「自前の神具……ですか?」
「はい。神具師としての力量を把握するにあたり、オリジナルの神具を数点ご提示いただくことが、当店の採用規則となっております」
「ちょ、ちょっと待ってください」
ダイナは急いでかばんを漁った。数日分の衣類とタオルと洗面用具。それらの荷物を押しのけて小さな巾着袋を引っ張り出す。巾着袋の中身はダイナの作った神具だ。
「これが私のオリジナル作品です。例えばこの付箋は、神力を込めると自由に色を変えられるんです。こっちのボールペンには目盛がついていて、書いた文字数を自動的に数えてくれます。あ、このサイコロは吉凶サイコロと言って、一日の運勢を占ってくれるんです」
次から次へと神具をつまみ上げ、ダイナは必死で説明した。神力の弱いダイナは人目を惹くような派手な神具は作ることができない。こうして細々とした文具に神力を籠め、少し便利にするくらいが限界だ。
だから故郷の神具店でも売れ行きは芳しくなかった。ガラクタ神具などと揶揄されたこともあった。
「……どうでしょうか」
ダイナが小さな声で質問すれば、店員の男性は気まずい表情となった。
「申し訳ありませんが、当店であなたを採用することはできません。私どもが必要としている神具師は、強大な神力を持ち、店の看板商品を作り出してくれるような方です。あなたの作る神具は確かに面白いですが、神具としての効果は下の下。当店の看板商品にはなり得ません」
「そうですか……」
ダイナはがっくりと肩を落とした。
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