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「照明器具をお探しですか」
抑揚のない声で話しかけてきたのは、スラックスを穿いた、眼鏡の男性店員だった。
シフト休みの月曜日。やってきたのは、家から少し遠いインテリアショップ。
照明のコーナーにはアンティークから近代的なものまで様々なデザインが並ぶ。価格はやはり希望より「0」が一つ多い。
自宅に近いリサイクルショップに2件行ってみたけど、目ぼしい商品には出会えなかった。
吊るされた蛍光色や電球色が眩しい。それをぼんやり眺めていた時に、声を掛けられた。
「ご希望のものがなさそうですか?」
遠くから観察されていたのだろうか。そう思うと居心地悪くなって「はい」と頷き、私はその場を立ち去ろうとした。
「カタログをお持ちしましょうか。気に入ったものがあれば、お取り寄せできます。ご希望の形状はございますか?」
20代半ばで、私と同じ年頃だろうか。店員は無愛想な見た目とは違って、真摯な姿勢で仕事をしていた。
「えっと、実は......」
休みの日にまで人と関わりたくない気持ちだったが、壊れた照明と似たものがあるなら、手に入れたかった。
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